魔法の誓約 (最後の魔法使者2)

「本が好き」さんよりいただいた本です。ありがとうございます。


前作で最愛の人を失ったヴァニエル。それから10年が経ち、ヴァルデマールの情勢も大きく変わっていた。隣国との戦いで多くの「使者」を失い、ヴァルデマールを支える主要な人物となってしまったヴァニエルには休む暇もない。カース国境での長い長い仕事を終えて戻ってきたヴァニエルは、気力も体力も使い果たしてしまった状態だった。ようやく休暇を取れると考えていた矢先、父から帰郷を促す手紙が届く。


あのヴァニエルも、喪失と苦難を経て大人になっています。特に「魔法使者」としては比類ない力の持ち主で誰も代われない立場になってしまっているため、休むこともできません。心も体も擦り切れていく彼のことを心配する友人たちもいるのですが、ヴァニエルの孤独感は癒されず、タイレンデルがいかに彼にとって大切な存在であったかを改めて感じました。

孤独感に苛まれるヴァニエルが、ある事件から助けて保護したのは、タイレンデルにそっくりの少年タシール。タシールを見るたびに、タイレンデルを思い出してしまうヴァニエルは、彼をタイレンデルの身代わりにしてしまいたいという欲望にも苦悩します。その気持ちを押さえ込み、正しくあろうとするヴァニエルが、魔法でタイレンデルの幻を作り上げるシーンはとても切なく、彼の悲しみが伝わってきました。

ヴァニエルが大人になっているので、彼の心の葛藤も前作ほど痛々しくはなく、リラックスして読めました。彼の人格形成上大きな影響力を持っていた父親と武術指南師との和解はとてもいいエピソードでした。若いときって自分のこととその周辺しか見えていないから、事象の背景にも気付けないんですよね。分かり合えて、本当によかった。

物語はいよいよ佳境。次巻では、いよいよ「詩人」ステフェンとの出会います。ヴァニエルの人生も、ヴァルデマールの運命も気になります。次巻が待ち遠しいです


魔法の誓約 (最後の魔法使者2) 上下巻

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書評

風野 真知雄 「妻はくの一」

妻は、くノ一 (角川文庫)

妻は、くノ一 (角川文庫)

平戸藩の御船手方書物天文係の雙星彦馬は、三度の飯より星が好きという藩きっての変わり者。そんな彦馬のもとに上司の紹介で美しい嫁・織江がやってきた。彦馬は生涯大切にすることを心に誓うが、わずかひと月で新妻は失踪してしまう。じつは織江は、平戸藩の密貿易を怪しんだ幕府が送り込んだくノ一だった。そうとは知らず妻を捜しに江戸へ赴く彦馬だったが…。人気著者が放つ「妻は、くノ一」シリーズ第1弾。


物語の始まりという感じかな。冒頭の静山のエピソードが何に繋がるのかも書かれていないし、彦馬と織江の一月だけの結婚生活もちょっとしか書かれていないので、なぜ織江も彦馬もそこまで互いを恋うのかがわからない。

それでも、星空オタクで武芸一般苦手な武士と、凄腕くの一の物語という実に魅力的な設定で読ませてくれる。彦馬の知らないところで織江が助けてるところが中々いい。

彦馬も武芸は苦手だけど、誠実で知的で優しいところが好感持てる。

作中の謎解きがメインなのか、静山の動きがメインなのか、はたまた彦馬と織江の関係がメインなのか、イマイチ掴みきれない第1弾だった。おかげで2作目も読んでみたくなった。

ミストボーンー霧の落とし子(2)(3)

FT5冊目。

ミストボーン―霧の落とし子〈2〉赤き血の太陽 (ハヤカワ文庫FT)

ミストボーン―霧の落とし子〈2〉赤き血の太陽 (ハヤカワ文庫FT)

“霧の落とし子”にして盗賊団を率いるケルシャー。彼の仲間に加わった少女ヴィンは、合金術の訓練を受けて、ルノー家の令嬢という偽の身分を装い貴族社会に入った。すべては“終の帝国”を転覆させるという計画の一端である。計画の壮大さや過去の経験からケルシャーを信じかねていたヴィンだが、彼の人柄にふれ少しずつ希望を感じはじめる。そんななか、彼女はルノー嬢として、読書家の風変わりな青年エレンドと出会い…。

ミストボーン―霧の落とし子〈3〉白き海の踊り手 (ハヤカワ文庫FT)

ミストボーン―霧の落とし子〈3〉白き海の踊り手 (ハヤカワ文庫FT)

七千人のスカー反乱軍は、大半が失われた。一度は潰えたかに見えたケルシャーらの計画だが、いまや帝都ルサデルの警備兵たちは街を離れ、相次ぐ暗殺事件によって貴族家間の緊張は高まった。帝都ルサデルの崩壊の準備は整いつつあるのだ。だが、十一番目の金属は本当に支配王を殺せるのか?ヴィンの貴族青年エレンドへの想いは?そしてケルシャーの本当の計画とは?すべての読者の心をふるわす衝撃と感動の完結篇。

支配王を倒すべくケルシャーが企ては何度も阻止されてきたけれど、彼の真の計画は驚くべきものでした。それも決して唐突なものではなく、読み終えてから思えば随所に伏線がちりばめられていたんです。そうきたかー!!と唸ってしまったほどお見事。

戦闘シーンもどきどきしました。ヴィンのあの女との戦いも激しかったし、ケル対尋問官もどきどき...
怒涛の展開で何度も予想を裏切られて、本当に面白かった。格闘女子ヴィンと哲学オタク青年エレンドの関係も気になったけれど、エレンドがイイヤツでよかった。

まだまだ謎も残っているので、今後の展開も楽しみ。未読のFTファンの方には強力にお勧めです。

ミストボーン―霧の落とし子〈1〉灰色の帝国

FT4冊目

ミストボーン―霧の落とし子〈1〉灰色の帝国 (ハヤカワ文庫FT)

ミストボーン―霧の落とし子〈1〉灰色の帝国 (ハヤカワ文庫FT)

内容(「BOOK」データベースより)
空から火山灰が舞い、老いた太陽が赤く輝き、夜には霧に覆われる“終の帝国”。神のごとき支配王が千年のあいだ統べるこの国の底辺には、スカーとよばれる卑しい民が存在した。盗賊団の少女ヴィンは、とるにたらぬスカーとしてひっそり生きてきた。ある日、腕に凄惨な傷をもつ男に見いだされるまでは―金属を体内で燃やし、不思議な能力を発現させる盗賊たちの革命を描き、全米でベストセラーとなった傑作、ついに開幕。

合金術の設定がとてもユニーク。すべての力が対になっていて、"押し"と"引き"から成ること。体内で燃やす金属と"押し"と"引き"の使い分け、対象物の質量、タイミングをうまく使って様々な能力を使うことができる。ケルの格闘シーンは、この金属の使い方が実に見事で脳内で一生懸命映像化してしまった。霧の中をひゅんと飛んでいく場面もいい。

ケルの本当の目的は何なのか、支配王とは何者か、後半出てきた宗教はどんな意味を持つのか、ヴィンはどうなるのか、などなど続編を読むのが待ちきれない。

白鳥のひなと火の鳥



白鳥のひなと火の鳥

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書評


「女魔法使いと白鳥のひな」を読了した勢いで読み始めて、目を疑いました。何これ?1作目とぜんぜん違うんだけど、と。

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女魔法使いと白鳥のひな



女魔法使いと白鳥のひな

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書評


Kinuko.Y.Craftさんの表紙がすばらしく美しいです。うっとり。「本が好き」さんに頂いた本です。

「道の民」の子ども達に伝えられてきた遊び歌に秘められた「ロウ王国」をゆるがす鍵。愛する人を助けるために、取引に応じたコールが見つけたものは...

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シャンナ・スウェンドソン作 スーパーヒーローの秘密 (株)魔法製作所 

2011年1冊目

東京創元社が、日本の読者のために作者に書き下ろしてもらったという一冊。東京創元社さんと作者の心意気には感ずるものがありますね。感謝感謝です。

スーパーヒーローの秘密 ((株)魔法製作所) (創元推理文庫)

スーパーヒーローの秘密 ((株)魔法製作所) (創元推理文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
久々の出勤の朝、いきなり地下鉄内で不審な魔法に出くわしたケイティ。魔法の悪用を防ぐための(株)MSIの切り札は、なんと復職したてのケイティによるカスタマーカンファレンス。愛するオーウェンの協力も得て、計画は順調に進むかに見えた。だがカンファレンスのさなか、敵の陰謀がオーウェンを襲う。大人気のロマンチックファンタジー第五弾、書き下ろし日本版オリジナルで登場。

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