闇の妖精王


闇の妖精王

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書評


「妖精の女王」の続編。ファンタジーです。

レスリーの内に渦巻く恐怖と怒り、それがダークコートの王を惹きつけた。弱体化しつつあるダークコートには、新しい糧が必要なのだ。一方、サマーキングの相談役ニールは、レスリーへの許されない想いに身を焦がしつつ、秘かに彼女の身を守っていた。友人を守ろうとするアッシュリン、レスリーを想うニール、そしてダークキング…。ロマンティック・ファンタジーの決定版第2弾。(裏表紙より)



主人公のレスリーは、芯が強いけれど心の傷を抱えていて、もろい少女。母親がいなくなってからレスリーの家庭は崩壊。かなりダークな展開だ。どんどんひどくなっていく父親のアルコール中毒と、兄の薬物汚染におびえながらも、日常生活を維持しようとがんばっている。

でも友人には話せない。大学に行くために奨学金に申し込み、後少しで家から出ていけると毎日を綱渡りの状態で暮らしている。前作でサマーコートの女王となったアシュリーは、親友のレスリーを妖精たちから守るため、自分のことを話さないし、レスリーも自分のことを話さない。そんな二人の間は次第にぎくしゃくしはじめている。

物語で大きな鍵となるのがタトゥーだ。レスリーのタトゥーは、自分の体を自分の者として取り戻すための彼女なりの再生のしるしなのだが、それが彼女の人生を大きく変えてしまう。

レスリーを見守るニールは、生まれ持った性癖により人間を虜にし、狂わせてしまうガンコナー。しかし自分の行いを反省し、生涯をかけて償うためダークキングの元から去り、サマーキングの補佐となった。ずっと人間とはかかわらずにいたのに、レスリーと出会って、信念がぐらついてしまう。レスリーのためならすべてを投げうつ、ニールかっこよくて渋い。

ダークキングも、自分勝手だけど、一方的な悪ではない。妖精としての性質だし、食物を得るために暗い感情を必要するわけだから。この辺が著者のうまいところだ。

前作同様二人の男性が一人の女性を巡ってあれこれあるロマンティック・ファンタジー。「中毒」「依存」がキーになっていて、前作よりもダークだけど面白かった。