アンナ・マクリーン「ルイザと水晶占い師」

生活費を稼ぐため、家族と離れボストンにもどった駆け出し作家のルイザ。親友のシルヴィアに誘われ、評判の水晶占い師パーシー夫人の降霊会に出席したルイザは、彼女のいんちきを見破る。影響されやすい友人を案じて、再度降霊会に同行すると、パーシー夫人は密室の中で何者かに殺害されていた…。クリスマスの季節に起きた密室殺人に『若草物語』の著者が挑む、シリーズ第三弾。

本編「若草物語」同様、清貧で温かい家族に恵まれているルイザでしたが、生計を立てるために再びボストンへ戻ってきました。今回は単身で、知り合いの家に下宿中です。ルイザは作家(といっても駆け出し)の仕事だけでは食べていけないし、クリスマスのプレゼントを家族に送りたい、というわけで、牧師さんから頼まれたシャツを縫う裁縫の仕事もしています。でも、裁縫の腕には自信のない彼女。期限までに仕上がるのか不安を持っています。ミステリとしてはどうでもよいような、このエピソードも後々事件にかかわってきます。

さて、いつもの如くルイザを事件にひっぱっていくのは、親友のシルヴィア。前作で儒教に凝っていたシリヴィアは、早々に儒教には飽きてしまい、降霊術という新しい情熱の対象を見つけます。人がよくて信じやすい親友を案じて、また多少の好奇心も手伝って、ルイザも降霊会に参加することにします。集まったメンバーは、いずれも一癖ありそうな人物ばかり。ルイザの予想通り、いかにも怪しい霊媒師パーシー夫人でしたが、何と二回目の降霊会の日に、鍵のかかった自室で何者かに殺害されてしまいます。

親友シルヴィアの結婚問題、家出をしてきた妹リジー、新作「アガサの告白」と盛りだくさんのエピソードが積み重ねられて、事件は意外な展開を見せていきます。(それにしても、シルヴィアの相手は意外でした。てっきりルイザと・・・と思っていたので)

これまでルイザを支えてきた家族たちは遠いところに住んでいますが、彼らとの手紙のやり取りはとても温かく、「若草物語」を読んでいる気分になれます。ルイザとリジーの姉妹の絆も、2年後のリジーの悲劇を史実として知っているだけに、とても切なくでも温かいのです。


一方でルイザの書く「アガサの告白」は、とても衝撃的で驚きました。こちらの方も読んでみたくなりました。


訳者さんによると、アメリカでは本作以降出版されていないとのことで、先が読めるのかどうか心配です。

ルイザと水晶占い師

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