氷上都市の秘宝

レン・ナッツワーシー15歳。かつての氷上都市アンカレジでの日常に物足りなさを感じていた彼女は、盗賊〈ロストボーイ〉の口車に乗せられて、図書館の本をこっそり持ち出した挙げ句、盗賊の本拠地に連れて行かれる羽目に。一方、愛娘を救わんと必死で後を追うトムとヘスターがたどり着いたのは、水上都市ブライトンだった。最終戦争後の遙かな未来、移動都市が互いを食い合う奇怪な世界を描いた星雲賞受賞作『移動都市』第三弾。

トムとヘスターの娘!!が出てくるなんて、感慨深い。

あのヘスターが、しっかりお母さんをやっているのには、本当に驚いたけれど、娘を持ち平穏に暮らしていてもなお、彼女のコンプレックスは解消されていない。成長した娘が、母親の醜い顔を恥じていることを知っていて、ひそかに傷ついているし、いつかトムが離れていってしまうのではないかと恐れている。

一方、幼い頃から育った穏やかなアンカレジで、冒険も恋もできそうにない刺激のない毎日にうんざりしていたレン。<ロストボーイ>にそそのかされて貴重な本を盗み出してしまう。このレンの行動が退屈ながら平和だった家族に大きな変化をもたらしてしまう。トムはこれまで敢えて見ようとしなかったヘスターの残酷さに気づいてしまった。もう二人は元に戻れないかもしれない。




これはレンの冒険物で、トムとヘスターはのんびりと暮らしていて、娘のピンチで最後に助けにくるんだろうなくらいの予想をしていたら、とんでもなかった。第1作、2作としっかりと繋がった物語だ。

思い切り「続く」で終わってしまっているので、早く完結編を読みたい。願わくばヘスターが本当に幸せになれますように。




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書評