スーザン・プライス「500年のトンネル」


ガーディアン賞を受賞したThe Sterkarm Handshakの翻訳。スーザン・プライスは「オーディンとのろわれた語り部」、「ゴースト・ドラム 北の魔法の物語」を読んだことがあるが、中々濃い物語だったという印象がある。この本はタイムトラベルものということで、純粋なファンタジーではないが、楽しみにしていた。

端的に言うと、これは21世紀から16世紀へと赴任したアンドリアが、まったく違う価値観を持つスターカームの人々と生活し、自分の価値観との違いに苦悩する物語である。殺人は悪という意識の私たち21世紀人「エルフ」とは異なり、16世紀に生きるスターカームたちにとって、殺人は悪ではない。21世紀では太目のアンドリアも、16世紀では美女として扱われ、スターカームの首長の息子に思いを寄せられている。彼らに魅了されながらも、21世紀人たちを見捨てることもできないアンドリアは板ばさみになるのだが、読んでいて実にストレスフル。でも、先が気になって気になって仕方がなく、あっという間に読了してしまった。暗く雑然として臭い、人がごろごろ死んでいく描写はさすがプライスだ。好きとは言えない、でも面白かった。

二十一世紀の私企業が極秘裡に開発した〈タイムチューブ〉。トンネル様の装置のむこうは十六世紀のイングランドスコットランド辺境地帯、戦いに明け暮れる荒くれ者の一族が待っていた! 二十一世紀側は魔法の「鎮痛剤」を提供し、見返りに天然資源を要求するが……。カーネギー賞作家によるタイムトラベル・ファンタジイ。

The Sterkarm Handshake
The Sterkarm Handshake


500年のトンネル 上 創元推理文庫 F フ 7-1

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