プロフェシイ        エリザベス・ヘイドン

プロフェシイ 上―大地の子  ハヤカワ文庫 FT ヘ 4-3
プロフェシイ 上―大地の子 ハヤカワ文庫 FT ヘ 4-3

著:エリザベス・ヘイドン|出版社:早川書房|発売日:2002/07|文庫|4150203172|"

アシェと旅に出ることになったラプソディ。気高く美しいエリンシノスと出会う。エリンシノスのエピソードはとても哀しい。この,物語の核となる伝説の主なのだが,純粋で繊細で恐ろしいというとても魅力的な存在。エリンシノスが意味ありげに呟く一言が,気になるなあ。
ところで,アクメドたちとは分かれたものの,それぞれに冒険は続いている。異なる種族から聞かされる伝説の一部ずつが,次第に形を成していくところがぞくぞくする。
ラプソディは相変わらず,子どもに弱く正義感が強い。謎が徐々に明かされていく過程が面白い。


物語の筋の他にこの三部作で好きなところは,ラプソディがどんな場所でも欠かさない朝夕の星への祈り。特にこの巻でオエレンドラが一緒に星への祈りを歌う場面はとても哀しく,美しく心に残った。

>そのとき,オエレンドラが夕べの歌を歌い始めるのが聞こえた。年齢と悲しみで枯れた声だったが,そこにはラプソディの心に強く訴える共感があった。かわいい孫に歌いかけている祖母の声。あるいは,戦死した夫を悼んでいるやもめの声。その不思議な哀しい声に,ラプソディは静かに自分の声を合わせた。歌っているうちに,太陽は西の丘の向こうに沈み,大空の外縁が青から,橙色,深紅,そして藍色に変わっていった。西方の地平線の上に,星がまたたきはじめた。日が沈むと宵の明星がすっかり姿を現した。(p441)

この後,二人の辛い過去を浄化していく歌が続く。