月神の統べる森で たつみや章

月神の統べる森で
月神の統べる森で

著:たつみや 章 , 他|出版社:講談社|発売日:1998/12|単行本|4062094487|

はるか。太古の昔。山も川も木々も獣も…みな心をもった存在だった。人もまた、月神の統べる森の恵みを受け取って生きていた。ある時、海からきたヒメカの民は、土地をかこってクニとし、敵意をむき出してムラに襲い掛かってきた。そして、ムラの若き長アテルイと、美貌の巫者シクイルケは、流亡の旅の途中、翡翠色の目ももつ少年ポイシュマと運命的な出会いをするのだった。""

縄文時代に光をあて・・・というところに興味を引かれて読んでみた。

家の扉をくぐるにも門の神に祈り、川の水をくむにも水の神に祈る。ポイシュマの生い立ちは特別であるから、祈りもまた多かったのだろうが、こういった「自然の恩恵に感謝する」という生き方ができたら、この社会も随分と違うのだろうと思う。
チャントの「赤い月と黒の山」でもそうだが、獣を狩るときにも相手への畏敬の念と感謝の気持ちをわすれず、多く取り過ぎないという生き方は、私達が考えなければならない大切なことだ。
物語は、ポイシュマの旅立ちで一巻を終えるが少年から大人への変化の儀式が大変に切なく、親というものはそういうものであるなと考えてしまった。
日の民と月の民、クニとムラ。対称的に見えるこの2つの民がこの後、どうなっていくのか楽しみだ。

全体にアイヌ神話が色濃く感じられた。(そこも好み)

2001-06-18