王のしるし ローズマリ サトクリフ

王のしるし
王のしるし

著:ローズマリ サトクリフ|出版社:岩波書店|発売日:2000|単行本|4001108305|

かつて、スコットランドにはピクト族とスコット族が住んでいた。ピクト族は、カレドニア族をその中心氏族とする連合で、今日スコットランドに定着した氏族である。スコット族はアイルランドに落ちついたが、ずっと後の時代にその一部が西の初冬やスコットランドの海岸地帯に帰ってくるのだ。
 この物語の時代、カレドニア族は、各氏族を押さえる存在にはなっていたが、ピクト族としての連合にはいたっていない。カレドニアは多くの氏族をまとめようとしている。「王のしるし」は、カレドニア族とダルリアッド氏族との争いにローマが少しだけ関わっている物語だ。
 カレドニア族は大地の母の信仰を保ち、ゲール人ダルリアッド族は太陽をあがめる。そのダルリアッドの王の身代わりとなった「赤のフィドルス」は、元剣闘士。つまりは奴隷であった。ダルリアッドの王子マイダーに瓜2つであったことから、氏族の争いに巻き込まれる。

マイダーは、少年時代に氏族の女王から暗殺されそうになり、その結果目を失う。ダルリアッド族では、そのようなものは王としてはみなされないのだ。ちょうど王の交代の時期であるマイダー暗殺事件から7年後に、フィドルスは、ゴールトらに身代わりを持ちかけられたのだ。フィドルスは、奴隷から解放されたばかりで今後のあても失うものもなかった。そこで、この申し出を引き受けうけることにした。
 フィドルスは、マイダーとなり氏族の元へ戻りカレドニア人の女王を倒す策謀に身を投じたのだった。""

 フィドルスは、王の身代わりをしている間にまさしく王らしくなっていく。この辺は、とても読み応えがあります。そして、マイダーも自分の運命に屈服することなく、目を失っても運命を受け入れようとはしなかった。忘れられないのはマーナ。女王の娘であり、むりやりフィドルスと結婚させられるのだが、彼女も運命を諾々と受け入れたりはしない。強さを感じました。

7年ごとの王の交代の血なまぐささ、銀の枝のことなどケルトのことを少しだけ知りました。