麦の海に沈む果実 恩田 陸

麦の海に沈む果実
麦の海に沈む果実

著:恩田 陸|出版社:講談社|発売日:2000/07|単行本|4062101696|

「ここに三月以外に入ってくる者があれば、そいつがこの学校を破滅に導くだろう」―湿原の真中に建つ全寮制の学園に、二月の終わりの日に転入してきた水野理瀬。彼女を迎えたのは、様々なしきたりや、奇妙な風習が存在する不思議な学校だった。彼女と学校生活を共にする仲間、「ファミリー」もそれぞれに謎を抱えていた。功は、閉ざされたコンサート会場の中から失踪し、麗子は、湿原に囲まれて外に逃げ出せないはずの学園から消えうせていた。残りのメンバーは、麗子はすでに死んでいるのではないか、と校長につめよる。それに対し、校長が提案したのは、麗子の霊を呼び出す交霊会の実施だった。その場で理瀬に奇怪な現象が襲う。「三月の学園」での奇妙な学園生活を送る理瀬の隠された秘密とは。""

これは,私が古い革のトランクを取り戻すまでの物語である。

冒頭のこの一文が物語を全て言い尽くしている。

書き出しを書いたときに,たいていこの話が面白いのか,面白くないのかがわかる。他人の作品でもそうだ。読み出した瞬間に,これが面白くなるか面白くならないかがわかる。

恩田陸は「三月は深き紅の淵を」の4章「回転木馬」で記している。「麦の海に沈む果実」は間違いなく,冒頭からぐぐっと引き込まれる面白さだ。
閉じられた学園。強烈な個性を持つ変わった校長。消えた生徒たち。「ファミリー」という与えられた「家族」。うーん,面白い。

ラストは「三月は深き紅の淵を」の方が好み。