十一月の扉 高楼方子

十一月の扉
十一月の扉

著:高楼 方子|出版社:リブリオ出版|発売日:1999/09|単行本|4897847443|

北の街。季節は十一月。「十一月荘」で暮らし始めた爽子の二か月間を、「十一月荘」を取り巻く人々とのふれあいと、淡い恋を通して丹念に描くビルドゥングスロマン。一冊の魅力的なノートを手に入れた爽子は、その日々のなかで、「十一月荘」の人々に想を得た、『ドードー森の物語』を書き上げる。物語のなかのもう一つの物語―。それらの響きあいのなかで展開する、豊かな日常の世界。""


幼い頃、寄宿舎とか寮生活に憧れたこと、誰でも一度はあると思う。

私も勿論その一人。この物語の主人公中学生の爽子は、偶然見つけた十一月荘にひょんなことから住めることになる。なんとも羨ましい設定だ。

十一月荘には女性3人と子供一人が住んでいて、爽子はすぐにそこの生活を楽しむようになる。十一月荘では思いやりに満ちた、でもさらりとした生活が営まれている。人付き合いに懐疑的な母に疲れていた爽子は、そんな下宿人たちと母を比べて母を批判したり、また温かく見られるようになったりする。爽子は、一人でおしゃれな喫茶店で物語を書いてみようなんて冒険もする。ちょっぴりトキメクこともある。

少女からオトナへのほんの2ヶ月の間を、「一人になれる空間」を持った幸せな爽子は満喫する。最後は希望に満ちた温かい終わり方でほんわかできる。中身は結構、考えさせられることも多いし、爽子が創る物語も「たのしい川辺」を思い出させて楽しい。これは、買い!です。(1999年11月1日)