ショコラ              ジョアン ハリス

ショコラ
ショコラ

著:ジョアン ハリス|出版社:角川書店|発売日:2001/03|単行本|4048970135|

ヴィアンヌ・ローシェは、6歳の娘のアヌクを連れて、2月の謝肉祭の最中に「トゥールーズボルドーを結ぶ道路沿いで光を放っていた」小さな村、ランケネ=ス=タンにやってきた。そして3日後、華やかなチョコレートショップを開く。そこには思わずつまみたくなるようなチョコやキャンデーがいっぱい並び、思わずよだれが出てきそうなオリジナルココアもある。しかし、いまや四旬節イースター前の断食や懺悔を行う期間)。教会の目の前で日曜日にオープンしているこの店は、教区の厳格な司祭、フランシス・レーノーの怒りを買う。
村の住民たちはひとり、またひとりとヴィアンヌの手作り菓子の魅力に屈していく。…ジョアンヌ・ハリスはこの3作目の小説に、人々の秘密や悩み、愛や欲望を、きわめて軽いタッチで織り込んでいる。登場するのはたとえば、悲しげで上品なギヨームとその死にかけた飼い犬。虐待され、手癖の悪いジョセフィーヌ・ミュスカ。それからヴィアンヌに「ショーウィンドーに飾ってある魔女つきのショウガ入りクッキーを食べていいわよ」と言われたとたん、「超サイコー!」と大騒ぎする子どもたち。それから80代でまだまだ元気いっぱいのアルマンド。彼女にはアヌクの「空想の」ウサギ、パントゥフルの姿が見えるし、ヴィアンヌの正体も見抜いてしまう。しかし、村人のなかには、アルマンドの気取った娘やジョセフィーヌの暴力夫など、レーノーの側につく者も。だからヴィアンヌがイースターの日は「チョコレート祭り」で幕開け!と発表したとたん、「教会」対「チョコレート」、「善」対「悪」、「愛」対「教義」の全面戦争が始まるのだ。

素晴らしく優雅な魔法でコーティングされた、「最高においしい」『Chocolat』は、ヘルマン・ヘッセの短編「Augustus」をも彷彿させる。「中味はクリームみたいにソフトなのが一番」ということを、教え諭すのでなく最高の説得力で証明してくれる、そんな小説だ。""(アマゾン)

フランスのはずれの小さな村、ランスクネ・スー・タンヌ。村人たちは、教会の教えを忠実に守り戒律を守り、ごくごく静かに暮らしている。いささかの楽しみも許されてはいない。
そんな村にヴィアンヌとアヌークはやってきた。放浪の旅を続けてきた2人はここに居をかまえ、チョコレートの店を開く。
初めは遠巻きに見ていた村人も1人、また1人と店にやってくる。ヴィアンヌは、村人たちの心を読む力を持っていたが、それをひた隠しにする。
静かだと思われていた村が実は教会の「黒い男」に支配されていて、人々の心を蝕んでいると知り、ヴィアンヌは、チョコレート店でささやかな抵抗を始める。

ちょっと不思議な味わいのあるファンタジーだ。ヴィアンヌや老女アルマンド、そしてヴィアンヌの娘アヌークの持つ力やアヌークの見えないペット、パントゥフル。それらのことは、本の仲であまり明らかにされない。そして、教会の「黒い男」のことも。更にヴィアンヌの過去・・・。いろいろな謎がそのまま残されているのに、心に残るまさにチョコレートのような小説だ。そして、生と死のイメージが色濃く流れる本でもある。
文中、ヴィアンヌはギョームに「あなたの信じるものは?」と聞かれ、こう答えている。「わたしの信じているのは、幸せであるってことが、一番たいせつだってこと」
と。
幸せとは、他人から与えてもらうものでも、管理されるものでもない、自ら「しあわせである」と感じることなのだと気づかせてくれる1冊だ。