きみにしか聞こえない―CALLING YOU 乙一

きみにしか聞こえない―CALLING YOU (角川スニーカー文庫)
きみにしか聞こえない―CALLING YOU (角川スニーカー文庫)

著:乙一|出版社:角川書店|発売日:2001/05|文庫|4044253021|

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偶然書店で手にした一冊が、こんなにおもいしろいとは。だから、書店での立ち読みは止められない。

私には携帯がない。友達がいないから。でも本当は憧れている。いつも友達とつながっている幸福なクラスメイトたちに。「私はひとりぼっちなんだ」と確信する冬の日、とりとめなく空想をめぐらせていた、その時。美しい音が私の心に流れ出した。それは、世界のどこかで、私と同じさみしさをかかえる少年からのSOSだった・・・(「Calling You」)

「Calling You」「傷」「華歌」の3作品が収められていて、どれもとても切ない。「Calling You」は、以前も書いたが茂田勝茂氏の作品をちょっと思い出した。あれも切なかったなあ。「傷」は、本当に痛くて痛くて、でも一番好きだ。心にぎりぎりと食い込んでくる魂の痛み。必死にあがく少年たち。ああ、何とかならないのか…、
「華歌」は、最後に「あっ!」と思った。すっかり騙された。これも、切なくて切なくて筆者は男性なのに、どうしてこんなに鮮やかに女性の痛みを切り取ることができるのだろうと不思議に思う。3作品とも切なく、そして美しい。