海と炎の娘     パトリシア A.マキリップ

海と炎の娘
海と炎の娘

著:パトリシア A.マキリップ|出版社:早川書房|発売日:1980/06|文庫|4150200211|

おのれの名にまつわる謎を解明すべく,偉大なる者を訪ねてエーレンスター山へ旅立ったモルゴン。だが,その後ようとして彼の行方は知れず,はや1年の月日が流れた。エーレンスター山で彼の身に何が起こったのか。彼の季刊を待ちわびる人々は謎に翻弄され,次第に不安のとりこと化していった。そんなある日,モルゴンの婚約者レーデルルのもとに,凶報がもたらされた。すでにモルゴンは何者かによって殺害されていたというのだ。沈痛な思いを胸に事の真相を見出さんと,彼女もまたエーレンスター山への旅路をたどり始めるが…""

『星を帯びし者』では,モルゴンが主人公だったが,今回は女性たちが主役だ。出てくる女性たちがみんな元気で強情で自我が強い。それが,とても魅力的だ。モルゴルの苦難を知りながら行動しない男たちに見切りをつけて,行動する潔さ。 前回はトールキンの色合いが濃かったが,今回はどちらかというとル・グィン系。

モルゴンも己とは何かと問い続けながら旅をしたが,レーデルルもまた,自分の名,自分の中に潜むものに怯えながら旅をする。蠢く死んだ王たち,海の香り…

うーん,暗い暗い夜に美しくきらびやかな光,熱い炎。とっても色彩豊か物語。オススメ