恋する男たち 篠田 節子 , 他

恋する男たち
恋する男たち

著:篠田 節子 , 他|出版社:朝日新聞社|発売日:1999/01|単行本|402257299X|

終わった恋、懐かしい恋、恐ろしい恋、愚かな恋…最近、恋はいかがですか。篠田節子小池真理子唯川恵松尾由美湯本香樹実森まゆみ。6人の女性作家が競作する、様々な恋のかたち。『週刊朝日』連載をまとめる。
-密会(篠田節子)
-彼方へ(小池真理子)
-終の季節(唯川恵)
-マンホールより愛をこめて(松尾由美)
-マジック・フルート(湯本香樹実)
-谷中おぼろ町(森まゆみ)"

・・・・たしかに網枝さんは他の人とは違っていたと言える。ときには話しながら涙ぐむようなこともあって,僕はそれまで泣いている大人を見たことはあっても,僕に涙を見せる大人というのははじめてだった。けれどそんなふうに無防備だったにもかかわらず,網枝さんが僕に不安を与えることは決してなかった。笑っても泣いても,網枝さんは網枝さんとしてそこにいた。いくぶん低い,ささやくような声とともに。・・・(抜粋p183)

恋する男たち」と題するアンソロジーの中の一編。他には,篠田節子唯川恵小池真理子松尾由美森まゆみ(全て敬称略)が書いてます。
小学校6年から二ヵ年,祖父の元に預けられて出会った網枝さんへの淡い恋を描いた短編。よくあるパターンでしょ?でも,そこは湯本香樹実さん,祖母の幽霊が出て来たり,網枝さんが一風変わっていたり。ちょっとしたスパイスが効いている。僕の恋だけではなくて,祖父母の苦い恋もちょっと出てくるあたり,短いけれど味わいは深い。