運命の剣 /マーセデス・ラッキー

運命の剣〈上〉
運命の剣〈上〉

著:マーセデス・ラッキー|出版社:東京創元社|発売日:2001/12/11|文庫|4488577040|


運命の剣〈下〉
運命の剣〈下〉

著:マーセデス・ラッキー|出版社:東京創元社|発売日:2001/12/11|文庫|4488577059|

(上)魔法使いケスリーの孫娘、まだ14歳のケロウィンは、母亡きあとの館の切り盛りすべてを任されていた。本来なら「姫」でいられるはずの彼女は理不尽さに悩むばかり。しかし、宴席の事件を機にすべてが一変する。父が殺され、兄嫁がさらわれたのだ。負傷した兄にかわって花嫁を救出したのは妹のケロウィン。前代未聞の事態にだれもが困惑、少女は自立し傭兵として生きる道を選択する。
(下)傭兵を志すケロウィンを後押ししたふたつのもの。ひとつは祖母ケスリーから譲り受けた魔法の剣"もとめ"。祖母にしか扱えなかったその剣は初めて後継者を選んだ。さらにはすぐれた師の存在。ケスリーと姉妹の契りを結んだ伝説の女剣士タルマだった。彼女の厳しい特訓により誕生した傭兵ケロウィンは、いよいよ本シリーズ"ヴァルデマール年代記"の主要舞台へと乗りこんでいく。""

ケロウィン(この名前は…どうなんでしょう)は、ケスリーも持たなかった「心話」の力を持ち,タルマも舌を巻くほどの剣の腕を磨き上げる。自立を望むケロウィンは,男によりかかるのをよしとせず,自分の力で傭兵隊を持つに至るのだ。
ケロウィンの若さならではの傲慢さが、経験を積むことによって熟練した戦士・女性へと成長していく過程が丁寧に書かれている。ラッキーは、いつも生活の細部まで書きこんでその世界の広がりを感じさせるが今回の作品も正にそんな感じ。最後がトントン拍子に収まってしまったのは「ん??」と物足りなかったが、これがヴァルデマール年代記へのプロローグであり、あくまで本編に彩りを添えるためのものであれば、仕方ないのかな。それでも骨太でしっかり地に足のついたファンタジーだと思う。おもしろかった。