精霊の守り人 上橋菜穂子

精霊の守り人 (偕成社ワンダーランド)
精霊の守り人 (偕成社ワンダーランド)

著:上橋 菜穂子|出版社:偕成社|発売日:1996/07|単行本|4035401501|

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30歳の女用心棒バルサを主人公に、人の世界と精霊の世界を描いたハイファンタジー野間児童文芸賞新人賞・産経児童出版文化賞ニッポン放送賞・路傍の石文学賞を受賞した作品で、『闇の守り人』『夢の守り人』『神の守り人(来訪編)』『神の守り人(帰還編)』と続く「守り人」シリーズの第1弾。

100年に一度卵を産む精霊〈水の守り手ニュンガ・ロ・イム〉に卵を産みつけられ、〈精霊の守り人〉としての運命を背負わされた新ヨゴ皇国の第二王子チャグム。母妃からチャグムを託された女用心棒バルサは、チャグムに憑いたモノを疎ましく思う父王と、チャグムの身体の中にある卵を食らおうと狙う幻獣ラルンガ、ふたつの死の手から彼を守って逃げることになるのだが・・・

水の守り手とは何なのか? 夏至祭りに隠された秘密とは? 多くの謎を秘めて、物語は人間の住む世界「サグ」と精霊の住む「ナユグ」の問題へと発展していく。精霊世界の存在や先住民族ヤクーの民間伝承など、古代アジアを思わせる世界の記述の細かさ、確かさは、文化人類学者である作者ならでは。

バルサを筆頭に、みずからの運命を呪いながらも逞しく成長していくチャグム、おてんばバアサンの呪術師トロガイ、バルサの幼馴染みのタンダなど、登場人物のキャラクター設定には魅力があふれている。オトナの純愛物語、少年の成長物語としても深い味わいを残す本書は、子どもたちだけのものにしておくには惜しい1冊。(小山由絵) ""

30才の用心棒バルサ
「長いあぶらっけのない黒髪をうなじでたばね、化粧ひとつしていない顔は日に焼けて、すでにこじわが見える。」うーん、この描写。とても児童文学の主人公のものとは思えない。しかし、このバルサ、実に魅力的だ。悩んだり、苦しんだりする等身大の女性だ。
バルサは、偶然皇子チャグムを救ったことから、警護の依頼を受ける。しかし、チャグムは「ニュンガ・ロ・イム(水の守り手)」の卵に関わる子どもだったため、異界・ヨゴ皇国の両方から追われることになる。
国を動かす聖導師と「異端」のトロガイの会話。チャグムの母親の辛さ。チャグムの警護の道すがら、バルサに関わる人々の歴史が少しずつ紐解かれ、次作へと繋がっている。
子どもよりもおとなの女性が愉しめる。超!!!!オススメ!
2001-04-30